一つしかないおもちゃを、二人の子どもが同時に使いたくなりました。「ぼくが先!」「わたしも使いたい」。楽しく遊んでいたはずなのに、突然お互いに譲れなくなることがあります。しかし、園生活ではこうした場面も大切な経験の一つです。自分の気持ちを言葉にすること、相手にも思いがあると気づくこと、どうすれば一緒に楽しめるかを考えること。子どもたちが人との関わりを重ねながら過ごす日常については、大和高田市の保育園での暮らしを知ることで、毎日の保育をイメージするきっかけにもなります。

家庭では自分の好きなタイミングで使えていたものも、集団生活ではそうはいきません。使いたいものを別の子が持っていたり、自分とは違う遊び方をされたりします。そんなとき、幼い子どもが最初から落ち着いて話し合えるとは限りません。手を伸ばして取ろうとしたり、「いや」と強く言ったり、悔しくて泣いてしまったりすることもあります。

その姿だけを見ると「けんかをしている」と感じるかもしれません。しかし、その中には人と関わるための学びがあります。自分が使いたかった。それなのに使えなかった。その気持ちをどう伝えればよいのか。まだ十分な言葉を持たない子どもにとっては、それを知っていくこと自体が経験になります。

そこで大人がすぐに「半分ずつ使いましょう」と答えを決めてしまうのではなく、それぞれの気持ちを確かめることがあります。「これを使いたかったんだね」「まだ遊びたかったんだね」と言葉にしてみる。すると、相手にも自分とは違う気持ちがあることが少しずつ見えてきます。

もちろん、一度話しただけで次からすべて譲り合えるようになるわけではありません。同じような場面を何度も経験します。けれど、その繰り返しの中で変化が現れます。「あとで貸して」と言えるようになる。「終わったらいいよ」と返せるようになる。少し待っている間に別の遊びを始めることもあります。

ここで大切なのは、いつも自分が我慢することではありません。

自分の思いを伝えることも必要です。「本当はまだ使いたい」「一緒にしたい」「それは嫌だった」。そうした気持ちを安心して出せることが、相手の気持ちを理解することにもつながっていきます。自分の意見を伝えながら、相手の話も聞く。その両方を少しずつ経験できるのが、友だちと一緒に過ごす園生活です。

遊びが発展すると、さらに複雑なやり取りも生まれます。数人で大きな積み木の家を作っていると、「ここは玄関にしたい」「こっちに窓を作ろう」と、それぞれ違うアイデアが出てきます。自分だけなら好きなように作れますが、みんなで一つのものを作るには、考えを伝え合わなければなりません。

「じゃあ、こっちはどうする?」

そんな一言から遊びが変化します。一人では思いつかなかったアイデアが加わり、最初に想像していたより面白いものができることもあります。友だちの考えを受け入れることは、自分の考えを捨てることではありません。互いの考えを組み合わせることで、新しいものをつくる経験にもなります。

また、人との関わりの中では、思い通りにならないこともあります。そのときに悔しい気持ちを抱えること、少し時間を置いて気持ちを切り替えることも、子どもにとって大切な経験です。大人がすべての困りごとを先回りしてなくしてしまうのではなく、安全を見守りながら必要なところで支えることで、子ども自身が人との関わり方を探していきます。

園で過ごす魅力の一つは、同じ年代の子どもたちと毎日顔を合わせられることです。昨日少し言い合いになった相手と、今日は隣で笑いながら遊んでいる。先週は自分が貸してもらったおもちゃを、今日は別の子に渡してあげる。人間関係は一回の出来事だけで決まるものではなく、日々の積み重ねによって少しずつ変化していきます。

「自分はこうしたい」と言えること。そして、「相手はどうしたいのだろう」と考えられること。その二つが育っていく過程には、うれしいことも、悔しいこともあります。友だちと笑い、ぶつかり、ときには助け合いながら過ごす毎日そのものが、子どもたちがこれから人と関わっていくための豊かな経験になっていきます。