保育士としてのキャリアアップを考えたとき、その選択肢は、必ずしも今いる園の中で、昇進の階段を登っていくことだけではない。時には、自らが身を置く「環境」そのものを変えること、つまり、「転職」が、自身のキャリアを飛躍させる、最も有効な手段となることがある。さらに、その先には、組織に属するという働き方そのものを越えて、自らの力で道を切り拓く、「独立」という選択肢も存在する。第一に、キャリアアップを目的とした転職先として、大きな魅力を持つのが「公務員保育士」への道だ。公立の保育園やこども園で働く公務員保育士は、地方公務員としての安定した身分が保障され、給与も、勤続年数に応じて着実に昇給していく。福利厚生や退職金制度も充実しており、長期的な視点で、安心してキャリアを築くことができる。採用試験という高いハードルは存在するが、それを乗り越えることで得られる安定性は、生涯にわたる大きなアドバンテージとなるだろう。これは、紛れもなく、有力なキャリアアップの一つである。次に、専門性を高めるための転職、という視点もある。例えば、一般的な保育園での経験を積んだ後、より専門的なケアが求められる「病棟保育士」や「児童養護施設の職員」へと、その舞台を移す。医療現場や、心に傷を負った子どもたちと向き合う中で、保育士としての人間性やスキルは、より深く、そして、より強く磨かれていくだろう。また、近年、その好待遇から注目を集める「企業内保育所」への転職も、ワークライフバランスを改善し、新たな環境で自分の力を試すという意味で、立派なキャリアアップと言える。これらの転職は、単に職場を変えるだけでなく、保育士としての新たな専門分野を切り拓く、挑戦的な一歩となる。さらに、保育の最前線から、一歩引いた立場で、その専門性を発揮するという道もある。例えば、保育士養成校の「講師」となり、自らの経験を、未来の保育士たちに伝えていく。あるいは、出版社や、おもちゃメーカーに就職し、保育の知見を活かした、商品開発やコンテンツ制作に携わる。現場で培った「子どもの視点」は、こうした業界において、非常に価値のある、独自の強みとなるだろう。そして、究極のキャリアアップの形として、「フリーランスとしての独立」や「起業」がある。特定の組織に属さず、ベビーシッターとして、複数の家庭と深く関わったり、自らの得意分野を活かして、リトミックやアートの教室を開いたりする。さらには、自らが理想とする保育を実現するために、小規模保育事業所などを立ち上げる。それは、大きなリスクを伴うが、自分の裁量で、全てを決定できる、最も自由で、創造的な働き方だ。キャリアアップの形は、一つではない。大切なのは、自分自身が、どのような保育士になりたいのか、どのような人生を送りたいのかを、常に問い続けることだ。今の場所に留まることも、新たな場所へ旅立つことも、全ては、より豊かな未来へと続く、あなた自身の選択なのである。
一つの園に留まらない、転職や独立も視野に入れたキャリアアップ