ずいぶん大昔のことになりますが、私は、幼稚園がどちらかと言うと嫌いでした。特に年少、年中の時は、周りに馴染めず、先生からも他の生徒と比べて、あまり気をかけてもらえてないと幼心に感じ、遊戯会の役も、脇役ばかりでした。年長になって、自分も幼稚園に慣れてきたのか、友だちもたくさん出来て、幼稚園が楽しく感じるようになりました。年長の時の担当の先生は、年少、年中の時の若いキレイなお姉さん風の先生と違い、中年の厳しそうな先生でした。でも、遊戯会や運動会など、いつも私に、難しい楽器や、素敵な役割を与えてくれて、それを幼いなりに、一生懸命こなすことによって、自分も出来るという自信を持つことにつながって行ったと思います。厳しそうな先生でしたが、話しかけるといつもハキハキ、目を見て、真剣に答えてくれていたと思います。帰りは、幼稚園バスで帰っていたのですが、別れの挨拶が決まっていて、「先生、さようなら。また明日」と先生と握手をしながら言って、帰ることになっていました。そして幼稚園最後の日の卒園式の後でも、同じように先生が一人一人の生徒と握手をしてお別れをして帰ったのですが、先生がその時、涙を流していたのです。幼いながらに、先生は、幼稚園の先生という仕事で、毎年のことなのに、涙まで流すことに、衝撃を受けたのを覚えています。もしかしたら、先生にも今回で幼稚園の先生を辞めるなどの個人的な事情があったのかもしれませんが、先生の、仕事と割り切った以上に、人と真剣に向き合う姿に、幼いながらに、はっとさせられたのを今でも覚えています。血の通った心をもって、1人1人に向き合う大切さを教えてもらったような気がします。