私が幼稚園に通っている頃の話です。私の住んでいるところは、かなりの田舎で子供の人数がとても少ないところでした。人気の奈良でも、この保育園はどこにも幼稚園といっても中に入ると、迫力満点のたくさんの大きな仏像が煌びやかに並んでいました。子供の目線では、見えないほどに大きくて物々しい雰囲気が漂っているのです。毎日幼稚園に着くと、お釈迦様や鬼子母神様へ感謝の挨拶をしに行きます。あまり活発ではない私が、仏像たちに見張られているようなところへ行き、遊ばなくてはいけないことがいつになっても慣れなくて、怖くてそこへは近付きたくなかったです。奈良の大和高田で求人の保育士はどこもお昼寝タイムになるとみんながスヤスヤと寝始めます。私は緊張が解けないのかいつになっても、目が冴えていくばかりでした。ある日そんな私を見かねてか、先生が私の小さな布団へ入り込んできたのです。私が落ち着いて眠れるのを待っていてくれるように、先生は一言も発しませんでした。顔が近くにあるのでどこを見たらいいかわからず、目をつむりました。先生の温かいぬくもりと、ほのかに香ってくる穏やかな優しい匂いで、私の心が安心していくのを覚えています。何だかずっとこのままでいたいような、心にある何かがゆっくりと溶けていくのが分かりました。いつの間にかぐっすりと眠ることができたので、いつも「先生お布団へ入ってきて」と心の中でお願いしていました。ですが、恥ずかしがりやで内気な私はお礼の言葉も何も言うことはありませんでした。何年経ってもあの時の温かい優しい気持ちは、匂いとともに色褪せることなく、私の記憶にいつまでもずっと、きっとこれからも残り続けていきます。